日本外科系連合学会誌
Online ISSN : 1882-9112
Print ISSN : 0385-7883
ISSN-L : 0385-7883
胃癌腹膜播種に対する術前遺伝子診断
腹腔内浮遊細胞におけるトリプシノーゲン遺伝子の発現について
北川 裕久藤村 隆太田 哲生伏田 幸夫米村 豊三輪 晃一宮崎 逸夫
著者情報
ジャーナル フリー

1997 年 22 巻 2 号 p. 224-228

詳細
抄録

われわれはdiffuse typeの胃癌において, 癌細胞の多くが, セリン系プロテアーゼであるトリプシノーゲンを産生しており, 細胞外マトリックス分解酵素として癌の浸潤, 転移に関与する可能性を指摘してきた。一方, 正常の腹腔内にはトリプシノーゲン産生細胞は存在しないことより, 癌細胞が漿膜層を越え, 腹腔内に撒布されている場合には, 腹腔内浮遊細胞の中にトリプシノーゲン産生細胞が証明されると考えられる。そこで今回RT-PCR法にてトリプシノーゲンを遺伝子レベルで検索することにより, 腹膜播種の術前診断への応用を試みた。腹膜播種が疑われ, 術前に腹腔内洗浄液を採取した8例中で, 手術時に肉眼的に腹膜播種が存在したのは3例であったが, mRNA レベルでのトリプシノーゲンの発現は3例全例にみられた。また腹膜播種のみられなかった5例中3例にも, mRNAレベルでトリプシノーゲンの発現が認められ, 今後腹膜播種再発に対して厳重な経過観察が必要と思われた。

著者関連情報
© 日本外科系連合学会
前の記事 次の記事
feedback
Top