抄録
近年, 画像診断の進歩により外傷性脾損傷の存在については比較的容易に診断が可能となったが, 合併症の有無も含めて手術適応については苦慮することが多く, 特に小児例については手術術式に対しても問題点が多いと考えられる。今回, われわれは1986年から1996年までに手術を必要とした小児外傷性脾損傷の3例について検討した。症例1;10歳, 男児。鉄棒より落下し, 左側腹部を強打した。脾は脾門部より完全離断しており, 脾損傷分類IIIb+HV型であり, 脾臓摘出術を施行した。症例2;4歳, 女児。自動車事故にて腹部を打撲した。小腸穿孔と脾損傷分類II型を認め, 小腸穿孔部閉鎖術および脾縫合修復術を施行した。症例3;4歳, 男児。父親と遊んでいて, 腹部を打撲した。脾損傷分類IIIa型を認め, 脾縫合修復術を施行した。小児期における脾損傷は身体的予備力が少なく, 急速に悪化するため早急な対応がせまられる。脾の免疫学的機能を考慮して的確に対応する必要がある。