1998 年 23 巻 4 号 p. 644-648
過去12年間に切除した胃原発悪性リンパ腫16症例を経験した。これらに関し, 胃癌取扱い規約第12版に基づいて術前の評価を行い, neoadjuvant chemotherapyとしての有用性などについて検討した。術前の進行度判定でStage IIIa以上に対し術前化学療法を3~4コース施行した後, 手術を行った。化学療法施行群7例中5例にdown stagingがみられ, 3例に手術摘出標本におけるリンパ腫細胞の完全消失を認めた。死亡例はT細胞性リンパ腫の2例のみで残る5例は全例生存中であり, 術後の5年生存率は約50%とこれまでの報告と比較し良好であった。また術前化学療法を施行していないstage I, II症例の5年生存率は100%であった。Stage IIIa以上の進行した症例においてはneoadjuvant therapyとしての術前化学療法が有用である可能性が示唆された。