抄録
腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行した1688例中, 術後に腹腔内膿瘍を形成した3例について, その原因と対策について検討した。症例1は63歳の男性で, 慢性胆嚢炎例であった。術中に腹腔内に結石を散石し, 2カ月後に腹腔内膿瘍を来した。開腹下に遺残結石の摘除とドレナージを施行し, 治癒した。症例2は65歳の男性で, 肝硬変症と糖尿病を合併した急性胆嚢炎例であった。炎症が著明なため, 胆嚢部分切除 (以下mucoclasis) を施行し, 術後に右肝下面に留置したドレーンから膿汁が排出した。抗生剤投与と洗浄により腹腔内膿瘍は消失し, 術後41日目に退院した。症例3は49歳の女性で, 急性胆嚢炎例であった。mucoclasis後に腹腔内膿瘍を形成したが, 抗生剤投与と洗浄にて, 術後33日目に退院した。遺残結石例や急性胆嚢炎におけるmucoclasis施行例では, 術後に腹腔内膿瘍を来すことがあり, 慎重なる経過観察が必要である。