抄録
スポーツヘルニア19例に対し, 早期に発症前のスポーツレベルに復帰することを目的に, 鼠径管後壁にtensionのかからないtension free repairを行い, その治療成績を検討した。右側7例, 左側10例, 両側2例であった。疼痛部位は外鼠径輪周囲が最も多く18例にみられ, 大腿内側8例, 鼠径管5例であった。10例に対し, 腹腔鏡下の腹壁補強を行った。腹腔内からの観察では, 気腹時に患側の膀胱上窩が健側と比較して陥凹しているのが全例にみられ, 腹壁補強に際してはこの部の補強が重要と思われた。9例に対し, PHS法を行った。腹腔鏡の所見から, PHS法においては内側は恥骨結合までunder lay patchを留置した。術後3ヵ月目では外鼠径輪周辺および大腿内側の疼痛は全例消失したが, 鼠径管の疼痛は1例において残存した。発症前のスポーツに復帰可能であった症例は18例95%であった。スポーツヘルニア症例に対する鼠径管後壁のtension freerepairはスポーツへの早期復帰に有効な手術法であり, 鼠径管後壁の補強には内側は恥骨結合までの十分な補強が必要と思われた。