日本外科系連合学会誌
Online ISSN : 1882-9112
Print ISSN : 0385-7883
ISSN-L : 0385-7883
術後に長期間高度なせん妄をきたした肝細胞癌の1例
中山 壽之青木 信彦増田 英樹柴田 昌彦天野 定雄福澤 正洋
著者情報
ジャーナル フリー

2001 年 26 巻 6 号 p. 1486-1489

詳細
抄録

術後せん妄が長期遷延することは稀である。今回, 肝切除後にせん妄を呈し6ヵ月以上精神不安状態を認めた1例を経験したので報告する。症例は66歳, 男性。健康診断で胸腺腫を指摘され入院した。腹部CT検査にて肝細胞癌の併発を認めた。癌告知を行い肝切除を先に行うことを説明した。術前より手術に対する不安を訴えていたが, 病状と治療法の説明を繰り返し行い同意を得た。肝右葉切除術が施行された翌日より興奮状態を呈した。精神科医指導により鎮静剤を投与したが第14病日においてもせん妄は持続した。術後6ヵ月経過しても不眠, 俳徊を断続的に繰り返した。術後せん妄の遷延を予防するには医療従事者とのコミュニケーションを密に取る必要があり, 特に複数のせん妄誘発因子を持つ患者に対しては術前から精神科医と協力し精神的看護や薬物治療を行うことが必要である。また手術侵襲を抑制し, 周術期の呼吸・循環・代謝動態の安定に努めることが重要であると考えられた。

著者関連情報
© 日本外科系連合学会
前の記事 次の記事
feedback
Top