日本外科系連合学会誌
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上部消化器癌のネオアジュバント療法 (5FU + CDDP, UFT + CDDP) の効果と薬物代謝酵素チトクロームp450 2E1 酵素の遺伝子多型性との関連
加藤 俊二田尻 孝松倉 則夫小野寺 浩之土屋 喜一池田 研吾木山 輝郎吉行 俊郎笹島 耕二徳永 昭恩田 昌彦
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2002 年 27 巻 2 号 p. 219-223

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抄録
5FU系抗癌剤の投与効果を規定する重要な因子にdihydropyrimidinedehydrogenase酵素があるが, チトクローム系酵素 (CYP) も種々の物資の代謝活性化酵素として, とくにCYP2A6やCYP2E1はFutrafulから5FUへの変換に関与してその効果に影響をおよぼしていると報告されている。5FU系抗癌剤 (5FUもしくはUFT) +CDDPによるネオアジュバント療法を施行した進行胃癌25例, 食道癌症例18例の組織学的 (grade I b以上) 抗腫瘍効果は, CYP2E1遺伝子のプロモーター領域の多型性がC2遺伝子タイプで23例中11例 (48%), C1ホモタイプで20例中2例 (10%) と, C2タイプがC1ホモタイプに比較しodds比で8.25と有意に高かった。遺伝子多型性とmRNA発現レベルとの関係を39例の肝癌切除例の非癌部肝組織で検討した結果, 肝に強く発現するCYP2E1のmRNAレベルは内因性コントロールであるGAPDH比でC1ホモタイプ (76.8±118.5) がC2タイプ (23.1±31.2) に比較して有意に高かった。cyp2E1遺伝子多型性がもたらす遺伝子発現の差やそれがもたらす酵素活性の強弱が5FU系+CDDP抗癌剤の抗腫瘍効果に影響をおよぼしている可能性がある。
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