2002 年 27 巻 4 号 p. 659-663
症例は57歳, 男性。47歳時から全結腸型の潰瘍性大腸炎に対し, サラゾピリンとプレドニソロンによる内科的治療が行われていたが, 再燃緩解を繰り返していた。発症後10年目に行ったsurveillance colonoscopyでS状結腸に6.0cm大の1型大腸癌が認められた。手術直前までのプレドニソロンの総投与量は68,600mgであった。下部直腸の炎症所見が軽微であることと, dysplasiaを認めなかったことから, 大腸亜全摘 (D3) ・回腸嚢肛門管吻合を行った。組織学的には高分化腺癌, 深達度mpのDukes Aであった。術後, プレドニソロンを漸減し約1カ月で中止した。術後2年経過した現在, 再発の徴候を認めず, 残存直腸粘膜の炎症もほとんど認めていない。長期にステロイドが使用され, かつ大腸癌を合併した潰瘍性大腸炎に対し, 大腸亜全摘 (D3) ・回腸嚢肛門管吻合は妥当な術式のひとつと考えられた。