日本外科系連合学会誌
Online ISSN : 1882-9112
Print ISSN : 0385-7883
ISSN-L : 0385-7883
興味ある画像所見を呈し, 術前診断に難渋した進行S状結腸癌の1例
岡村 慎也笠巻 伸二河井 健小野 憲山暗 忠光
著者情報
ジャーナル フリー

2002 年 27 巻 4 号 p. 677-681

詳細
抄録

興味ある画像所見を呈し, 術前診断に難渋した進行S状結腸癌の1例を経験した。症例は50歳, 男性。主訴は下痢, 発熱左下腹部痛。来院時, 左下腹部に圧痛を認めたが, 明らかな腹膜刺激症状や腫瘤を認めなかった。注腸造影検査ではS状結腸に進展不良な不整狭窄像を認め, 大腸内視鏡検査では注腸造影検査に一致して狭窄部の肛門側に粘膜の敷石様変化を認め, 狭窄部を通過すると粘膜の粗造を認めた。大腸内視鏡検査は3回施行したが, いずれの生検でも炎症性変化を認めるのみで, 悪性所見は認めなかった。以上より, 虚血性大腸炎を第一に考え, 保存的治療を行った。しかし, 改善傾向を認めず, 悪性疾患も否定できないため手術を施行した。手術所見は典型的な2型大腸癌であったが, 後腹膜に強固に癒着しており, S状結腸間膜は肥厚し牽縮していた。病理組織学的には癌が後腹膜に穿通したことによる後腹膜脂肪織炎とS状結腸間膜脂肪織炎の併発によって, 典型的な2型大腸癌でありながら興味ある画像所見を呈したものと考えられた。

著者関連情報
© 日本外科系連合学会
前の記事 次の記事
feedback
Top