日本外科系連合学会誌
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骨盤底筋群弛緩症 (子宮脱, 膀胱瘤) を伴い肛門より脱出した直腸肛門管癌の1例
山戸 一郎藤井 久男小山 文一山内 昌哉内藤 彰彦中島 祥介
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2002 年 27 巻 4 号 p. 686-690

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抄録

症例は79歳, 女性。主訴は肛門部腫瘤。肛門に, 粘液の付着した, 全周性, 直径約5cmの隆起性病変を認めた。また, 膣前壁を介する著明な子宮脱, 膀胱瘤が認められた。大腸内視鏡検査では, 下部直腸から肛門管にかけて存在する, 全周性で小児手拳大の1'型の腫瘤を認めた。MRIでは, 腫瘍は長径約6cmに及び, 肛門より外部に突出するようにして存在した。また, 矢状断にて膀胱と子宮の著明な下垂・脱出を認めた。以上により, 子宮脱, 膀胱瘤を伴い, 肛門より脱出した直腸肛門管癌と診断した。子宮脱, 膀胱瘤に対しての手術は, 経膣式子宮全摘術および膣前壁形成術を行うのが一般的であるが, 本症例では直腸切断術が必須であり, 骨盤底を補強するため腹会陰式直腸切断術に膣閉鎖術および経腹的膀胱子宮吊り上げ術を付加した。骨盤底筋群弛緩症を伴い肛門より脱出した直腸肛門管癌は, 非常に稀な症例と思われるため報告した。

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