日本外科系連合学会誌
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血清コリンエステラーゼ異常低値患者における開腹手術の1例
川崎 篤史大井田 尚継久保井 洋一三松 謙司福澤 正洋
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2003 年 28 巻 2 号 p. 303-305

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抄録

症例は64歳, 女性。右季肋部痛を主訴に当院内科を受診。画像検査により胆石, 胆嚢炎, 総胆管結石症と診断された。手術目的で術前検査を施行したところ, 血清コリンエステラーゼの異常低値を認めた。その他の血液検査所見には異常は認めず, 肝疾患および消耗性疾患の存在は否定された。手術は全身麻酔下, 開腹胆嚢摘出術, 総胆管切石術, Tチューブドレナージ術を施行した。麻酔導入および術中筋弛緩にはベクロニウム (非脱分極性筋弛緩薬) を用いた。術後経過は良好で, 術後26日目に退院となった。術中の筋弛緩は手術を安全に施行する上で, 特に開腹手術では不可欠である。現在, 術中に使用される筋弛緩薬は, その作用機序により脱分極性のものと非脱分極性の2者に大別される。血清コリンエステラーゼ異常低値の病態は非常に稀であるが, 筋弛緩薬の使用についてはその適応や種類, 合併症に留意し, 特に血清コリンエステラーゼによって分解される脱分極性筋弛緩薬の使用は避けるべきである。

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