仙骨前部に発生する成人 (思春期以降) 奇形腫はきわめて稀な疾患である。今回, 男子高校生に認められたので文献的考察を加えて報告する。症例は16歳, 男性。発熱と肛門痛を主訴に他院を受診。直腸背側の粘膜下膿瘍の診断で, 2回の経肛門的穿刺排膿を受けていた。その後も微熱が続いたため, 当科紹介入院。骨盤CTで最大径5cmの多房性嚢胞を, MRI (T2強調画像) 検査で第3仙椎から尾骨にかけて直腸を取り囲むように多房性の高信号領域を認めた。仙尾部嚢胞性病変と診断し, 経仙骨的アプローチで手術を行った。腫瘍は強固に直腸後側壁に癒着しており, 腫瘍を尾骨とともに可及的に摘出したが, 男性性機能の完全温存を目的に, 第4仙骨より高位の腫瘍壁は摘出せずに焼勺した。切除標本の組織学的検索では成熟した3胚葉成分を認め, 成熟奇形腫と診断した。術後6カ月経過した現在, 再発の兆候を認めていない。