日本外科系連合学会誌
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原発巣に対する局所切除後21ヵ月間生存した直腸肛門部悪性黒色腫・同時性肝転移の1例
大澤 智徳石田 秀行石塚 直樹猪熊 滋久橋本 大定
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2003 年 28 巻 5 号 p. 929-933

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抄録
遠隔転移を伴う直腸肛門部悪性黒色腫 (ARMM) の予後は一般に極めて不良である。今回, ARMM同時性肝転移に対し, 経肛門的局所切除と全身化学療法を施行した1例を経験したので文献的考察を加えて報告する。症例は64歳, 男性。肛門部腫瘤を主訴に受診。術前検査で歯状線直上に可動性のある径3.5cm大の隆起性黒色腫瘤を認め, 生検で悪性黒色腫と診断された。CTおよびMRIで多発肝転移を認めた。局所切除後にcisplatin, vindesine, dacarbazineからなるCVD療法を開始したところ, 術後10ヵ月に肺転移が出現したが, 肝転移は術後NCを持続した。その後, 肝・肺転移巣の急速な増大を認め, 術後21ヵ月時に原癌死となった。本邦では遠隔転移の有無に関らず, ARMMの大多数に対して腹会陰式直腸切断術が選択される。本症例は遠隔転移を有するARMMでも, 原発巣の局所切除と化学療法により従来の報告例と比較して長期生存の可能性を示す興味のある1例である。
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