日本外科系連合学会誌
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巨大デスモイド腫瘍摘出後に発症した急性肺動脈血栓症の1例
畑 泰司池田 正孝山本 浩文池永 雅一大植 雅之関本 貢嗣左近 賢人門田 守人
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2003 年 28 巻 6 号 p. 1011-1016

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抄録

症例は31歳, 男性。30歳時にfamilial polyposis coliと診断され, 大腸全摘出術を施行した。術後11ヵ月目のCTで腹腔内に巨大なデスモイドを認め, 摘出術を施行。術後3日目に体動を契機に軽度の呼吸苦が出現。4日目にはさらに呼吸苦が強くなり, 肺血流シンチとMDCTにて急性肺塞栓症と診断された。ただちに抗凝固療法を開始し, 合併症を認めることなく臨床症状は軽快した。また, 治療開始後12日目の肺血流シンチにおいても肺血流欠損部位の改善を認めた。本症例では術前の巨大腫瘍による下大静脈系の圧排, 骨盤内の腫瘍摘出操作が下肢静脈血栓症の原因となり術後の肺塞栓症になったと考えられた。今後このような下大静脈系を広範囲にわたり圧迫している腫瘍摘出術の際は術後急性肺塞栓症の発生を念頭に置いた周術期管理が必要と考えられた。

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