抄録
虫垂原発腹膜偽粘液腫に集学的治療を行い, 予後の改善につながったと考えられる1例を経験したので報告する。症例は73歳, 男性。腹部膨満を主訴に精査したところ, 腹腔内に粘調な腹水と盲腸下端にのう胞性病変認め虫垂原発腹膜偽粘液腫と診断し手術施行した。開腹すると腹腔内には多量のゼリー状粘液が存在し虫垂には嚢腫状腫瘤を認め穿孔していた。回盲部切除とあわせて腹腔内を5%ブドウ糖, デキストラン製剤にて洗浄後cisplatinを腹腔内投与し, 術後も留置ドレーンから7日間, 5%ブドウ糖とデキストラン製剤による洗浄を繰り返した。病理所見は虫垂粘液嚢胞腺癌であり虫垂間膜リンパ節転移を認めた。術後2年3カ月を経過し, 再発を認め, 化学療法を行っている。最も有効な治療法は, 原発巣および粘液塊を排除することであり, 切除に加えて今回施行した腹腔内洗浄および化学療法は粘液産生細胞の排除に効果的であり, 予後の改善に有効であったと考えられた。