2005 年 30 巻 2 号 p. 139-142
症例は18歳の男性。主訴は呼吸困難。既往歴に脳性麻痺による精神遅滞とてんかん発作がある。1999年頃から頸部腫脹の進行とともに呼吸困難とてんかん発作の増加を認めるようになり来院した。前頸部に弾性軟・表面平滑・可動性不良な腫瘤を触知した。頸部CTで甲状腺右葉は54×37×113mm, 左葉は65×54×80mm大に腫大し, 気管は胸骨切痕を中心に長径24mm, 横径4mmの狭窄を認めた。甲状腺腫による気管狭窄と診断し, 気管支鏡ガイド下に挿管後, 甲状腺全摘術を施行した。甲状腺は, 前頸筋・気管・食道等への浸潤は認めず, 圧排性の発育を示し, 病理組織診断は腺腫様甲状腺腫であった。術後24時間の挿管・人工呼吸器管理を行い, 合併症なく第8病日に退院した。術後3年間, 呼吸困難とてんかん重症発作は認めていない。