日本外科系連合学会誌
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胃切除術後状態での末梢静脈栄養中に発症したWernicke脳症の1例
岩瀬 和裕保木 昌徳位藤 俊一水野 均水島 恒和相馬 大人
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2005 年 30 巻 5 号 p. 712-715

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抄録

症例は77歳, 男性。16年前に胃全摘術を受けており, 経口摂取量低下に対し2年前から経腸成分栄養剤および活性型ビタミンB1 (Vit B1) 製剤を投与されていた。4ヵ月間の在宅中心静脈栄養の後, 末梢静脈栄養 (非タンパク熱量300kcal/日) を連日受けていたが, 体重減少により入院となった。入院後は2000ml/日, 糖質熱量600kcal/日の末梢静脈栄養が行われていたが, 入院10日目にめまい, 11日目に健忘症状, 複視, 12日目に側方視での眼振が出現し, Wernicke脳症と診断された。Vit B1の投与を開始したところ症状は改善し, 後日結果を得た入院12日目の血中Vit B1濃度は14 (正常域20-50) ng/mlであった。胃切除術後状態など不顕性Vit B1欠乏状態の併存が懸念される症例においては, 低下カロリーの末梢静脈栄養といえどもVit B1欠乏症発症に注意する必要があると考えられる。

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