2005 年 30 巻 5 号 p. 723-728
症例は70歳女性。右乳房腫瘤 (3cm) を主訴に当院を受診した。MMG (mammography), 乳US (乳房超音波検査), FNAC (fine needle aspiration cytology) の結果はclass Vであり, T2N1M0 (StageIIb) の乳癌の診断のもとBt+Ax (Auchincloss法) を行った。術後FEC 60mg/mm2/triweekを6クール投与したが, 2000年3月のCTで肺転移を確認した。もともとTamoxifenを内服すると副作用が出るため, 抗エストロゲン剤は本人の希望で投与していなかった。ドセタキセル40mg/mm2/weekを2002年10月まで投与, パクリタキセル80mg/mm2/weekを2003年6月まで投与するも肺転移は進行した。その時期に発売となったExemestane (アロマターゼ阻害剤) を投与したところ, 肺転移は消失し, 腫瘍マーカーも正常化した。ところが投与途中でわかったことだが, 副作用の出現を嫌い, この薬を患者本人は3日に1錠しか内服していなかったのである。その後は現在も3日に1錠内服を続けている。特殊な投与方法で著効を示した再発乳癌の経験例を文献的な考察を加え報告する。