日本外科系連合学会誌
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診断に難渋した悪性胸膜中皮腫の1例
直居 靖人黒川 英司山本 仁
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2005 年 30 巻 5 号 p. 732-737

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抄録

診断に難渋した悪性胸膜中皮腫の1例を経験したので報告する。症例は65歳男性。主訴は左胸部, 背部痛。胸部レントゲン検査にて左胸水を指摘され, 疼痛コントロールと胸水精査目的にて入院した。胸腔穿刺ドレナージ術を施行し, 胸水細胞診, 胸水培養検査, 胸腹部CTなどを頻回に施行するも, 確定診断を得ることができなかった。その間にも疼痛は増悪傾向にあり, モルヒネ類などを施用するも有効な疼痛対策にはならなかった。悪性胸膜中皮腫を疑い胸腔鏡下胸膜生検術を考慮するも, 十二指腸潰瘍出血や, 嚥下性肺炎などの合併症の為全身状態が悪化し, 施行することができなかった。入院後80日目に左前胸部に2cm大の硬結が出現し, 2回目の生検にて悪性胸膜中皮腫と診断されたが, その9日後に永眠された。近年発症頻度が増加傾向にある悪性胸膜中皮腫は, 発育形態が特異なため, 診断に難渋することが多く, 予後不良な疾患である。

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