2005 年 30 巻 5 号 p. 748-752
回腸脂肪腫による腸重積症の2例を経験したので, 文献的考察を含めて報告する。症例1 : 52歳, 女性。腹痛・黒色下痢便を主訴に来院。CTで右下腹部に重積腸管を認めた。回腸回腸結腸型の腸重積に対し, 回盲部切除を行った。終末回腸から約60cm口側に3.0×2.5×2.5cm大の粘膜下腫瘍を認めた。症例2 : 52歳, 男性。間欠的腹痛を主訴に来院。CTで上行結腸内に腸管が重積しており, 先進部に円形の3.0×2, 5cm大のlow density massを認め, CT値から脂肪腫による腸重積を強く疑った。終末回腸から約10cmの腫瘍を含む小腸部分切除を待期的に行った。2例とも, 組織学的に脂肪腫と診断された。自験2例を含む本邦報告50例の小腸脂肪腫の大きさと術前CTでの診断率について検討したところ, 大きな腫瘍ほど術前診断率は高くなる傾向を認めたが, 診断可能であった症例とされなかった症例の間で腫瘍の大きさに統計学的に有意差を認めなかった。