2005 年 30 巻 5 号 p. 785-789
症例は67歳, 男性。主訴は左側腹部痛。平成16年6月21日から腹痛が出現した。6月28日再度腹痛出現, また38.2°Cの発熱を認めたため近医を受診し, 当院紹介受診となった。受診時左側腹部に圧痛およびBlumberg徴候を認め, 白血球5120/mm3), CRP13.61mg/dlであった。細菌性腸炎の診断で入院した。入院後抗生剤を投与するも腹部所見, 炎症反応とも改善せず6月30日再度腹部CT検査を施行し, 腸管の近傍に低濃度領域を認め内部に高densityの線状影を認めた。魚骨による腹腔内膿瘍・腹膜炎の診断で手術を施行した。下行結腸間膜に膿瘍を認め, 同部位から25mmの魚骨を確認した。魚骨による消化管穿孔・穿通では特異な臨床症状がなく, 診断が困難となりやすい。しかし, 詳細な問診・病歴の聴取や, CT・超音波検査などの画像診断により術前診断できた症例も散見される。原因不明の腹膜炎・腹腔内膿瘍を認めた場合, 本疾患も念頭に置く必要があると思われた。