2005 年 30 巻 5 号 p. 807-813
症例は53歳, 女性。舌癌 (TINOMO) に対する放射線治療7年後の腹部CT検査で肝下部下大静脈を左側に圧排する腫瘍を認めた。舌癌の再発はなく, 下大静脈原発平滑筋肉腫の術前診断で開腹術を行った。下大静脈右壁から発生していた腫瘍を下大静脈壁の一部を含めて切除した。静脈壁欠損部は浅大腿静脈パッチを用いて再建した。術後合併症なく第15病日に退院した。病理組織検査では腫瘍の一部に肉腫成分を有する平滑筋腫と診断された。Desminなどの筋原性マーカーは筋腫成分に陽性であったが, 肉腫部分では陰性であった。消化管間質腫瘍のマーカーとして知られるc-kitが肉腫成分のみに陽性を示した。術後1年2ヵ月の現在, 再発なく社会復帰している。組織発生の面からも興味深い症例であり, 下大静脈原発平滑筋肉腫本邦報告43例の検討を加え症例報告する。