2005 年 30 巻 6 号 p. 907-910
われわれは早期の画像診断, 血栓溶解療法を行えたにもかかわらず, 入院中に消化管穿孔にて再発した上腸間膜動脈血栓症の1例を経験したので報告する。症例は59歳男性。イレウスの疑いにて当院紹介受診した。腹部CT上にて上腸間膜動脈血栓症が疑われたため緊急腹部血管造影を施行した。上腸間膜動脈造影にて右結腸動脈分岐部の血栓による不完全閉塞を認めた。ウロキナーゼ60万単位動注し, 血栓吸引, バルーン拡張術を施行, 血流の再開を認めた。その後経過良好であったが28病日より腹痛出現。32病日にレントゲン上freeairを認め, 穿孔性腹膜炎の診断にて緊急手術となった。Treitz靱帯より20cmの部位から約1mの広範囲壊死と穿孔を認めた。広範小腸切除術, 小腸瘻, 粘液瘻造設術を施行。術後, 敗血症を併発し開腹手術後4病日に死亡した。経カテーテル的治療後は再発を常に留意して早期の診断と慎重な経過観察が重要と考え, 若干の文献的考察を加え報告する。