2006 年 31 巻 6 号 p. 920-924
1996年1月から2006年5月まで当院で十二指腸潰瘍穿孔の診断を受けた32例を手術選択群14例, 保存的治療選択群18例 (うち完遂群14例, 手術移行群4例) に分け, それぞれの臨床的特徴を検討するとともに, 保存的治療の妥当性について検討した。手術選択群は保存的治療選択群とくらべ発症から来院までの時間が長く, 来院時腹部CT検査での腹水貯留部位数が多かった。保存的治療選択群では, 入院翌朝の腹水貯留部位数が保存的治療完遂群で入院時と不変もしくは減少したのに対し, 手術移行群では入院時より増加していた。また入院翌朝までに腹痛の軽減を認めたのは完遂群が全例であったのに対し, 手術移行群ではわずか1例であった。手術移行群の開腹所見では被覆されていた潰瘍穿孔は1例もなく, 手術は妥当であったと考えられた。保存的治療選択群で重篤な合併症や死亡例はなく, 保存的治療の選択およびその後の判断も妥当であったと考えられた。