日本外科系連合学会誌
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急速に増大した若年者嚢胞内乳癌の1例
津嶋 秀史日下部 輝夫
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2006 年 31 巻 6 号 p. 929-933

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抄録

嚢胞内乳癌は乳腺嚢胞壁内に乳頭状に増殖する比較的稀な特殊型乳癌の一つである。今回われわれは34歳という若年者に発症し, 急速に増大する過程を超音波検査で観察しえたその1例を経験した。症例は34歳, 女性。左乳房腫瘤を主訴に来院。マンモグラフィーおよび超音波検査で嚢胞と診断した。穿刺すると52ccの淡々血性の液が吸引され, 細胞診はclassIで経過観察とした。しかし再貯留と再穿刺を繰り返す間に液量が増加し, 嚢胞の形態にも変化がみられ, 細胞診もclassIIIとなったため手術を行なった。手術時には嚢胞部分はほぼ消失して充実性腫瘍の形態をとっており, 病理組織学的には充実腺管癌と診断された。リンパ節転移はなかったが, 年齢やホルモンレセプター陰性などを考慮し, 術後補助化学療法を行い, 現在無再発生存中である。年齢, 組織型, 発育形態など興味ある症例と思われ, 若干の文献的考察を加え報告する。

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