2023 年 31 巻 1 号 p. 109-116
急性期の疲労骨折の段階にある分離症の発生因子を調査するため,野球選手における身体所見との関連について検討した.対象は当院にてMRI による腰椎疲労骨折の診断を受けた12~15 歳の男子野球部員18 名(骨折群)と,対照群として腰部・下肢に症状を有さない12~16 歳の男子野球部員25 名である.身体所見として両群の指床間距離,下肢伸展拳上テスト,股関節外旋および内旋可動域,Duncan-Ely test,Thomas test,Oberʼs test を評価し,比較検討した.結果として,骨折群は対照群と比べ,Duncan-Ely test の陽性率が高く(利き手側:66.7%vs28.0%,非利き手側:72.2%vs32.0%),外旋可動域は大きく(利き手側:62.8̊vs55.2̊,非利き手側:65.6̊vs56.6̊),内旋可動域は有意に小さかった(利き手側35.3̊vs44.0̊,非利き手側:33.6̊vs41.4̊)(Mann-Whitney U test,Fisherʼs exact test).これら股関節前面の柔軟性低下や内旋可動域の減少は,ピッチングやバッティング,ダッシュなどの動作時における骨盤前傾を増大させ,腰椎前弯を強くすることや,腰椎回旋負荷を増大させるために,腰椎疲労骨折を誘発する可能性が考えられた.