2023 年 31 巻 1 号 p. 117-121
【緒言】腰椎分離症は力学的負荷の違いで骨折が生じる方向が異なることが予想される.CT の水平断・矢状断方向の骨折線の角度について野球選手とサッカー選手の比較をしたため報告する. 【方法】2015 年4 月から2019 年2 月までで当院受診した腰椎分離症患者で,L5 に限定しCT を用いた病期分類で,骨折線が明確である水平断が初期もしくは進行期,矢状断で1c 期もしくは2 期の患者のうち野球選手もしくはサッカー選手37 分離34 例を対象とした.分離部骨折線の角度はCT を用いて水平断は基準線を椎体後壁として,矢状断は基準線を椎体頭側終板として分離骨折線との角度を計測した.野球群とサッカー群の比較をt 検定で解析しp<0.05 を有意差ありとした. 【結果】水平断の骨折線は野球群18.7±6.3̊,サッカー群19.7±12.2̊であった(p=0.80).また矢状断の骨折線は野球群77.3±9.4̊,サッカー群66.9±9.5̊であり(p=0.0064),有意に野球選手の方が大きかった.【考察】腰椎分離症では下関節突起が伸展時に関節突起間部へ衝突する直接応力や,伸展や回旋時に関節突起間部の腹側・尾側面にかかる伸長応力が分離の発生に関与する.特に骨折線方向は腰椎伸展では水平方向に,腰椎回旋では垂直方向に応力が集中するとされており,野球は回旋動作がサッカーに比べ多いことが影響していると考える.