2023 年 31 巻 1 号 p. 131-136
車いすバスケットボール競技では頻繁に転倒が発生する.試合中の転倒は傷害発生のリスクを高めるのみならず,次のプレーへの参加の遅れをきたし試合の勝敗にまで影響を及ぼす可能性がある.本研究の目的は車いすバスケットボール競技における転倒発生と勝敗の関係について探り,転倒予防の重要性を再確認することとした.
東京2020 パラリンピック車いすバスケットボール競技決勝トーナメントの公式試合動画(男女全20試合)の転倒発生状況を分析した.分析項目は,転倒回数,転倒者の障がいクラス,転倒時のプレー時間,攻守,他のプレーヤーとの接触,コートエリア,ボール保持の有無,転倒後の試合経過とし,それらを勝ちチームと負けチームで比較した.
合計326 回の転倒回数が記録され,138 回(42.3%)が勝ちチームで,188 回(57.7%)が負けチームで発生した.勝ちチームと負けチームでの転倒発生に関連する項目の比較では,転倒者の障がいクラスに有意な差を認めた(p<0.05).特に,体幹のコントロールが良好な4.0-4.5 の選手の転倒回数の差が大きく,勝ちチームは29 回,負けチームでは62 回であった.また,試合後半の転倒が勝ちチームでは67 回,負けチームでは116 回発生し,転倒発生時のプレー時間にも有意な差を認めた(p<0.05).
車いすバスケットボールの転倒発生が試合の勝敗と関わっている可能性が示されたため,今後の転倒予防啓発の情報として活用していきたい.