日本臨床スポーツ医学会誌
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大学生野球選手の肩・肘関節障害の状況 ―入学時メディカルチェックとその後の症状について―
小松 猛池田 樹広江見 亮輔坂本 和大佃 文子
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2023 年 31 巻 1 号 p. 145-152

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抄録

野球選手に多くみられる肩・肘関節障害において,著者らは大学生野球選手の入学時の肩・肘関節障害の状況を把握し,在学中に肩関節および肘関節症状を来たす選手のメディカルチェック(以下MC)結果の特徴を調べ,その傾向とMC の意義について検討した.

硬式野球部所属の大学生37 人を対象とし,入学時のMC では,アンケート調査,肩・肘関節エコー検査,肩関節・股関節ROM 測定を行った.そして,在学中に肩または肘関節痛でプレーに支障を来たした選手に対しては,MC 結果との関連性について調査した.

肩または肘関節障害の既往がある選手は26 人(70.3%)で,ピッチャー経験者が14 人(現在もピッチャーをしているのは12 人)いた.

エコー検査では,明らかな腱板断裂はなかったが,腱板の線維不鮮明化を伴う高エコー像などの異常は33 人(89.2%)に存在した.肘関節では,上腕骨小頭離断性骨軟骨炎を4 人に認めた.

在学中に肩または肘関節の疼痛を訴え受診した選手は10 人(27.0%)で,6 人がピッチャーで,経験者も含めると8 人となった.症状を来たした選手では,投球側肩関節2nd 外旋ROM の増加,2nd 内旋ROM の減少を認めたが,統計学的有意差はなかった.

MC で初めて発見された上腕骨小頭離断性骨軟骨炎の1 人は症状出現時に早期対応可能であったことから,大学入学時のMC は有用であると考える.

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© 2023 一般社団法人日本臨床スポーツ医学会
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