2023 年 31 巻 1 号 p. 56-62
日本プロサッカーリーグ(J リーグ)の試合における男子選手の膝前十字靭帯(以下ACL)損傷の特徴を,動画を用いて明らかにすることを目的とした.対象は,2016~19 年の4 シーズンでJ リーグ所属選手において公式発表されたACL 損傷事例全111 件の内,受傷シーンを動画で確認できた42 件とした.検討項目は,①受傷形態(非接触・接触損傷),②攻守(攻撃時・守備時),③移動方向(攻撃方向に対して前向き・後ろ向き),④受傷エリア(攻撃・守備エリア)のそれぞれにおける発生数とした.また,攻撃時と守備時における受傷エリアと移動方向の発生割合と,受傷エリア別の移動方向について攻撃時と守備時でそれぞれ発生割合を比較した.結果は,非接触損傷69%,守備時62%と非接触損傷と守備時の発生が多い傾向であった.攻撃時は攻撃エリア,守備時は守備エリアでの発生が多く有意差が認められた.受傷エリア別の移動方向について,守備時は守備エリアで後ろ向きでの発生が多く有意差が認められた.
J リーグにおけるACL 損傷は,非接触損傷と守備時に多く,守備時の受傷は守備エリアで多く発生し,その54% は後ろ向きで発生していた.
予防のためには,守備時に特に守備エリアにおける後ろ向き動作は損傷リスクが高くなることを,選手や指導者が認識しておくことが必要だと考える.