2023 年 31 巻 2 号 p. 282-289
本研究では当院にて腸腰筋損傷と診断されたスポーツ選手の特徴を明らかにすることを目的と した. 2015 年3 月から2020 年3 月の間に腸腰筋損傷と診断されたスポーツ選手83 例を対象とした.MRI にて肉離れタイプ(Muscle-Strain Type:MT)と腱周囲炎タイプ(Peritendinitis Type:PT)に分類し,発生件数,年齢,男女比,スポーツ種目,外傷の有無,受傷動作,疼痛自覚から受診までの期間,複合損傷の有無,競技復帰までの期間について診療録より後ろ向きに調査し,比較検討した. MT 45 例,PT 38 例であり,男女比ではMT はPT と比較して男性に有意に多かった(p<0.05).スポーツ種目ではMT はサッカーに多く,PT は陸上(特に短距離・ハードル)に多かった.受傷機転ではMT は外傷ありが有意に多く(p<0.01),走行動作やキック動作が多かった.PT は外傷なしが有意に多かった(p<0.01).複合損傷はMT 12 例,PT 6 例であり,両タイプ間に有意差は認められなかった.疼痛自覚から受診までの期間はPT と比較してMT が有意に短かった(p<0.01).競技復帰期間はPT と比較してMT が有意に短かった(p<0.01). 腸腰筋損傷にはMT とPT のタイプがあり,それぞれのタイプの発生状況に違いが認められた.