日本臨床スポーツ医学会誌
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スポーツを行う児童・生徒に生じる,貧血を伴わない鉄欠乏症の成因の検討
清永 康平松田 貴雄南 達也
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2024 年 32 巻 1 号 p. 143-153

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抄録

(緒言)男子では身長増加に伴う循環血液量の増加に伴い,希釈性貧血が生じ,女子では月経による失血にて貧血が生じると考えられてきた.これまで内分泌的成熟による影響を考慮されたものがなく,スポーツを行う児童・生徒についてphase 毎に貧血に関わる鉄欠乏の状態を観察した.

(方法)9 歳から17 歳のスポーツ活動を行う男子209 名,女子140 名の計349 名を対象に,成長記録から最大年間成長率を同定してphase に区分し,血液測定結果を比較した.

(結果)男子ではphase 毎に血色素量,総テストステロンが増加したが,phaseII でフェリチンの低下が有意であった(p<0.01).女子ではphase IV でクレアチニンの有意な増加が見られた.

(考察)男子と女子の初経前では最大年間成長率を示す前のphaseII では血色素量は増加して希釈性貧血は見られなかった.男子のphaseII で生じたのはフェリチンの低下による鉄欠乏であった.男子では総テストステロンの増加による造血作用のため,血色素量が低下しないと考えられた.女子では常に鉄欠乏で,身長の伸びが1cm/y 未満のphaseIV でフェリチンの低下は骨格筋の増加が関与すると考えられた.

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