2024 年 32 巻 3 号 p. 437-445
近年の調査で国民の40%以上が花粉症に罹患しているという報告があり,ラグビー選手においても同程度の患者がいると考えられる.アスリートにおける薬物治療の際にはドーピングの禁止物質に注意する必要がある.本研究は,ラグビー選手の花粉症有病率や花粉症の競技への影響等について調査し,選手の花粉症治療の改善に役立てることを目的とした. JAPAN RUGBY LEAGUE ONE及び大学の上位リーグに所属する選手を対象に,2023年5月から9月にGoogle Formsを用いたアンケート調査を実施した.調査項目は,年齢,競技歴,花粉症の有無,花粉症以外のアレルギーの有無,花粉症の治療内容,競技への影響等を調査した.アンケートの回答率は33.9%であった.年齢は21.6±3.8歳,競技歴は11.8±5.3年であった.花粉症有病率は医療機関の受診状況と服薬状況から42.7%であった.花粉症症状ありと回答した選手750人のうち,花粉症が競技へ影響すると回答した選手は77.5%であった.影響の詳細は,花粉症の症状のせいで集中力・判断力が下がると回答した選手が最も多く,73.1%であった.医療機関を受診している選手は受診していない選手に比べ,また,薬物治療をしている選手は薬物治療をしていない選手に比べ,競技へ影響すると回答した選手は有意に多かった.ラグビー選手における花粉症治療の重要性が確認できた.