2026 年 39 巻 1 号 p. 41-46
症例は50代の男性で,意識障害,徐脈,低血圧を主訴に救急搬送された。アジルサルタンおよびビソプロロールの処方歴,大量の空包から薬物中毒が疑われた。カテコールアミンおよびバソプレシン(AVP)の投与を開始したが低血圧は入院6日目まで遷延した。しかし両薬剤の血中濃度は,4日目までに低下していたことが判明した。アジルサルタンはアンジオテンシンⅡ(angiotensinⅡtype 1;AT1)受容体からの解離が遅く,その代謝物もAT1受容体の阻害作用をもつ。また,ビソプロロールの代謝物にはβ1受容体阻害活性があることが知られている。アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬の過量投与に対する確立された治療法は存在しないが,本症例ではカテコールアミンが無効であり,AVPが血圧改善に有効であった。本症例から,降圧薬による急性薬物中毒の管理において血中薬物濃度のみならず,代謝物の活性や受容体結合阻害作用の影響を考慮する必要性が示唆された。