2026 年 39 巻 3 号 p. 245-252
背景:アセトアミノフェン(APAP)は妊娠中にも比較的安全とされ,広く使用されているが,過量摂取により母体・胎児の双方に重篤な肝障害を引き起こす可能性がある。APAP中毒に対する治療指標としてRumack-Matthewノモグラムが広く用いられているが,妊婦への適用例は限られている。
症例:妊娠20週の30代女性がAPAPを15g内服し,服薬後1時間で救急搬送された。気管挿管・胃洗浄を行い,実測体重(87kg)に基づいてN-アセチルシステイン(NAC)投与を開始した。APAPの血中濃度を4時間ごとに測定した結果,Rumack-Matthewノモグラムの治療ラインを下回る典型的な推移を示した。肝障害は認められず,産婦人科による胎児モニタリングでも異常を認めず,第7病日に退院した。その後は正期産で自然分娩に至り,児は2歳時点においても明らかな発達遅滞を認めていない。
結論:妊娠中期のAPAP中毒に対し,胃洗浄とNAC反復投与を行い,血中薬物濃度モニタリングにRumack-Matthewノモグラムが有用であった。