2026 年 39 巻 3 号 p. 253-257
学校内の個室でリモート授業を受講中の女子中学生が過量服薬により死亡した症例を報告する。教員によるプリント配布から約1時間40分後,椅子に座ったまま嘔吐した姿勢で発見され,心肺停止状態のまま搬送された。搬送先で一時的に心拍再開が得られたものの再び心停止となり死亡確認された。解剖では諸臓器のうっ血,溢血点,胃内に融解途中の薬剤様内容物と著明な胃粘膜下出血を認めた。薬毒物分析では,ジフェンヒドラミンおよび代謝物が検出され,末梢血中濃度は50.6 μg/mL と致死濃度域を大きく上回っていた。誤嚥等の所見は認められず,死因は急性薬物中毒と診断された。摂取量は致死量の約2倍と推定され,服薬後30~90分以内にナトリウムチャネル阻害による致死性心室性不整脈を主体とする複合薬理作用により短時間のうちに死亡したと考えられる。本事例は,市販薬でも条件次第では短時間で致死的転帰をとり得ることを示す一例である。