抄録
僧帽弁置換術後の人工弁周囲逆流は重大な合併症の一つである.1991年から2006年に人工弁周囲逆流による溶血性貧血が主原因で再手術を施行した9例を対象とし,修復方法や手術成績について検討した.逆流部位は後尖側弁輪部3例,前尖側弁輪部2例,前交連側弁輪部1例,後交連側弁輪部1例,特定できなかったものが2例であった.原因は,弁輪部分の石灰化が5例,人工弁感染後が1例,特定できなかった症例が3例であった.手術は再弁置換術を4例,再固定術を5例に施行した.多臓器不全で1例が手術死亡し,遠隔死亡は4例で,脳梗塞1例,くも膜下出血1例,突然死1例,持続する人工弁周囲逆流による心不全死が1例であった.僧帽弁置換術後に人工弁周囲逆流を呈する症例は複数回の手術例が多く癒着剥離に難渋し十分な視野を確保することが困難なことが多く,広範な石灰化弁輪のため逆流を生じた場合には再発率も高く再固定にさまざまな工夫を要した.