日本心臓血管外科学会雑誌
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症例報告
特発性血小板減少性紫斑病合併症例に対する開心術の1例
—術前 γ グロブリン大量静注療法—
池上 博久鈴木 友彰西村 修木下 武神原 篤志松林 景二浅井 徹
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2008 年 37 巻 2 号 p. 108-111

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抄録
症例は62歳,女性.特発性血小板減少性紫斑病を合併した大動脈弁狭窄逆流症,狭心症,および発作性心房細動に対する手術目的で入院となった.特発性血小板減少性紫斑病合併症例に対する人工心肺使用下開心術では,血小板の急激な減少による出血傾向の出現が問題となることがある.われわれは,本症例に対して術前にγグロブリン大量静注療法(400mg/kg×5日間)を行った.入院時の血小板数は,9.4×104/mm3で,同療法前後で血小板数に変化はなかった.しかし,術後4日目より血小板数は増加し始め,退院日である術後12日目には術前の約2倍にまで増加し出血傾向の出現なく良好な術後経過をたどった.γグロブリン大量静注療法は,本症例のように術前血小板数があまり変わらない症例においても,術後しばらくして安定した血小板増加が期待でき,特発性血小板減少性紫斑病合併症例に対する開心術の周術期管理に非常に有用であると思われる.
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