日本心臓血管外科学会雑誌
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原著
生後3カ月未満の開心術例における創感染予防対策の効果
櫻井 一水谷 真一加藤 紀之野中 利通杉浦 純也波多野 友紀
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2009 年 38 巻 1 号 p. 7-10

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抄録

新生児や乳児期早期では他の年齢層に比べ術後創感染や創治癒遅延が目立っていたため,対策として生後3カ月未満の正中創開心術例に2005年8月より皮膚縫合を編み糸吸収糸の連続縫合からモノフィラメント非吸収糸の結節縫合に変更し,創保護材もガーゼからハイドロコロイド創傷被覆材に変更した.この変更前の前期群28例と変更後の後期群22例を比較検討した.各手術時日齢:45±30,21±23日と前期群で有意に大きく,体重,手術時間,体外循環時間に有意差はなかった.閉創時間:30±11,22±4分,術後入院日数:61±41,44±31日でともに後期群で有意に短かった.縦隔洞炎発生は前期の1例のみで,創感染や創治癒遅延は,前期8例,後期3例,創再縫合を要したのは前期の4例のみであり,有意差はないが後期で創感染や創治癒遅延の頻度や程度が減少した.皮膚縫合法変更による創局所の血流の改善やハイドロコロイド創傷被覆材による皮膚の保温保湿,pH緩衝,静菌作用などにより,手術時間を延長することもなく,入院期間短縮にも寄与し,創感染予防,創治癒促進に有用であったと考えられた.

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