日本心臓血管外科学会雑誌
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症例報告
敗血症性肺塞栓で長期挿管を要したペースメーカー感染の1例
吉永 隆國友 隆二森山 周二高志 賢太郎高本 やよい村田 英隆川筋 道雄
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2009 年 38 巻 4 号 p. 262-265

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抄録

敗血症性肺塞栓は稀な疾患であり,胸部レントゲン像も非特異的で診断が遅れることが多い.今回われわれは,ペースメーカー感染から敗血症性肺塞栓を発症し,術前より長期挿管を要した症例を経験したので報告する.症例は76歳,女性.1年前に完全房室ブロックによりペースメーカー植込み術を受けていた.前医にて感染性腸炎の診断で治療を受けていたが,敗血症性ショックとDICを発症したため当院紹介となった.入院後の血液培養および右前胸部ペースメーカー植込み部の穿刺液培養からはMRSAが検出され,心エコーでは三尖弁位に尤腫が認められた.入院直後から徐々に呼吸状態が悪化し,胸部CTで末梢優位の空洞形成を伴う結節影が認められた.敗血症性肺塞栓による呼吸不全と診断し,人工呼吸管理と併行して抗菌薬投与による感染制御とDICの改善を図った.挿管から23日目にペースメーカー抜去,三尖弁後尖切除・形成術,心外膜リード式ペースメーカー植込み術を施行した.術後は気管切開と16日間に及ぶ人工呼吸管理を要したが,その他の合併症なく術後48日目に退院した.呼吸不全を伴うペースメーカー感染においては,敗血症性肺塞栓の鑑別と術前管理が重要と思われた.

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