日本心臓血管外科学会雑誌
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症例報告
クロピドグレル投与中の OPCAB 施行例でトラネキサム酸による出血対策が有効であった1例
岩橋 英彦田代 忠森重 徳継林田 好生伊藤 信久竹内 一馬西見 優桑原 豪助弘 雄太
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2009 年 38 巻 6 号 p. 389-393

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抄録

症例は72歳男性,不安定狭心症にて近医に入院した.薬剤溶解性ステント(DES)挿入目的にクロピドグレル300 mg/day,アスピリン200 mg/dayを投与されていた.冠動脈造影(CAG)にて冠動脈左主幹部と3枝病変を認め,CAG中に胸痛を認めたためIABPを挿入し,当院に緊急入院した.即日に緊急off pump CABG(OPCAB)6枝を施行した.出血対策としてトラネキサム酸は10 mg/kg/hで持続投与し,さらにアスコルビン酸を手術開始時2,000単位,冠動脈吻合後2,000単位の合計4,000単位をボーラス投与した.手術時間は6時間であり,手術中の出血量は220 gであった.また術後12時間の総出血量は190 mlと少量であった.術後経過は良好で,術後13日で退院となった.クロピドグレル投与中の患者でもトラネキサム酸を投与することにより,手術による出血を最小限に抑えることができるものと考えられた.

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