日本心臓血管外科学会雑誌
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症例報告
Destination therapy を目的とした LVAD 装着患者の外出プログラムの1例
権 重好末松 義弘森住 誠清水 剛西村 隆許 俊鋭
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2010 年 39 巻 2 号 p. 65-68

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抄録

症例は茨城県在住の63歳の男性.2008年6月5日大分県別府に旅行中,AMIにて近医救急搬送された.LMT閉塞を認め,PCIを施行した.再開通するもLOSにてIABP,PCP S離脱できず,6月19日大分大学付属病院へ転院し東洋紡社製LVADを装着した.12月7日縦隔洞炎を契機に敗血症となる.創部よりMRSAが検出され,創部開放し連日縦隔洗浄を行った.患者および家族の強い希望にて,東京大学付属病院を経由し,4月1日当院へ転院となる.医師,リハビリ士,臨床工学士,看護師と綿密な打ち合わせの元,全身状態の悪化の可能性も考え,外出に要すると考えられる必要最小限の外出プログラムを計画した.起立,立位,歩行器による室内歩行,段差昇降リハビリを行い,4月25日モバートNCVCにて一時外出した.片道40 km,自宅滞在時間2時間30分,外出時間5時間であった.移動中トラブルは無かった.今回の一時帰宅は,患者および家族に対する精神的効果は絶大であった.治療の目標や到達点を見出せない中,心臓移植や離脱困難なLVAD装着患者にとって外出プログラムは,患者および家族のQOL向上になり得る.

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