2010 年 39 巻 2 号 p. 69-73
症例は73歳,女性.胸腹部大動脈瘤破裂で前医より緊急搬送された.CTで腹腔動脈分岐部直上に最大径70 mmのsaccular typeの大動脈瘤とその周囲の血腫を認めた.上腸間膜動脈(SMA)の選択的造影で膵アーケードを介した腹腔動脈(CA)分枝の良好な血流を確認したうえで,SMAを温存するようにCA開口部(celiac axis)を閉鎖し末梢側landing zoneを確保してステントグラフト(SG)を留置した.術後CTでエンドリークはなく,CA分枝がSMAからの側副血行を介して開存していることを確認した.術後は,腹部臓器障害や対麻痺もなく,第36病日に独歩退院した.術後6カ月のCTも問題なく,外来通院中である.本症例のようなSG治療による低侵襲化は,破裂性胸腹部大動脈瘤治療の重要な選択肢になりうると考えられる.