抄録
基礎的心疾患や薬物常用歴のない成人に発症した三尖弁位感染性心内膜炎に対して,弁形成術を施行した1例を報告する.症例は35歳男性.発熱を主訴に受診し,経口抗生剤を投与されるも解熱と発熱を繰り返した.血液培養にて黄色ブドウ球菌(MSSA)が検出され,心エコーで三尖弁に疣贅と中等度逆流を認めた.保存的治療で感染の制御が困難なため,活動期であったが手術を施行した.疣贅を含む中隔尖の約1/2と後尖の約1/2を一塊として切除し,切除部の弁輪縫縮と弁尖の縫合を行った.人工弁輪は使用しなかった.術後経過は順調で三尖弁逆流はほぼ消失し,追加の抗生剤治療で感染の制御を行った後に退院した.術後1年余を経過した現在も感染の再燃を認めていない.