日本心臓血管外科学会雑誌
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症例報告
再手術を契機に指摘された冠動脈肺動脈瘻の1例
村瀬 俊文田村 進横室 仁志大関 泰宏海老根 東雄
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2010 年 39 巻 2 号 p. 82-85

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抄録
症例は64歳,女性.38歳時に心房中隔欠損症(ASD)で直接閉鎖術を施行している.今回,NYHA IIの労作時息切れを主訴に当院を受診した.心エコー上,僧帽弁閉鎖不全症(MR),三尖弁閉鎖不全症(TR),ASDシャントの残存を認め,手術の方針となる.術前の冠動脈造影検査にて右冠動脈(RCA)および左冠動脈前下行枝(LAD)より肺動脈主幹部へ流入する異常血管を認めた.また,RCAからの異常血管は一部,瘤を形成しており,CTでも同様の所見を認めた.僧帽弁置換術(MVR),三尖弁形成術(TAP),ASD閉鎖術と同時に冠動脈肺動脈瘻閉鎖を行った.冠動脈肺動脈瘻閉鎖では肺動脈内腔からの瘻孔閉鎖と瘻結紮を行った.体外循環下に肺動脈(PA)を横切開し,肺動脈内腔に冠動脈肺動脈瘻の開口部を認めた.LADより分岐した異常血管を同定し結紮切離した.RCAからの異常血管は同定できず,PA前面に確認できた瘤への血管を結紮した.PA閉鎖の際に異常血管の開口部を縫合閉鎖した.術後経過は良好で,合併症なく経過した.術後に行った冠動脈造影では,冠動脈肺動脈瘻の一部残存を認めた.より確実に瘻孔閉鎖を行うには肺動脈内腔からの瘻孔閉鎖と異常血管を同定した上での瘻結紮が必要と考えられた.
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