日本心臓血管外科学会雑誌
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原著
病的上行大動脈に対する大動脈遮断方法の工夫
森住 誠古川 浩深田 睦末松 義弘小西 敏雄
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2010 年 39 巻 4 号 p. 159-161

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抄録
上行大動脈の硬化性病変は心臓手術例においてしばしば認められる.その際,大動脈遮断に伴う脳梗塞予防のため,我々は短時間循環停止を用いて大動脈遮断を行っている.また,高度な石灰化例では遮断による上行大動脈への裂傷を回避する目的で,独自に作製した大動脈内遮断器具(オクルーダー)も用いている.2005年4月から2007年12月までに,この方法を上行大動脈に高度石灰化および動脈硬化性病変を有する18症例(石灰化13例・粥腫5例)に応用した.循環停止時間は最長5分以内,大動脈遮断時の直腸温も30℃以上に保った.結果,入院死亡なく術後脳合併症も認めなかった.本方法により粥腫および石灰化の破綻を最小限に留め,これらの硬化片が残存しても動脈切開部位より血管外に排出しえたと考える.本手技は,病的上行大動脈例における脳合併症を防ぐ遮断方法として有用な選択肢の一つと考えられた.
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