日本心臓血管外科学会雑誌
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症例報告
成人左室心筋緻密化障害に陳旧性心筋梗塞を合併した症例に対して冠動脈バイパス術を施行した1例
前田 孝一阪越 信雄松浦 良平島崎 靖久
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2010 年 39 巻 4 号 p. 191-194

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抄録

左室心筋緻密化障害は胎生期に左室心筋の緻密化が障害された先天性の心筋症であり,心不全が進行する予後不良の疾患である.最近では成人例の報告も散見されるようになり,成人例左室心筋緻密化障害に開心術を施行した報告もされている.今回著者らは,成人例左室心筋緻密化障害に陳旧性心筋梗塞を合併した症例に対して冠動脈バイパス術を施行したので報告する.症例は54歳男性.労作時呼吸苦を主訴に入院となり,心エコーにて左室緻密化障害を伴う左心機能障害(LVEF 25%)を認めた.また,冠動脈造影では#1,#6の完全閉塞を含む3枝病変を認めた.心筋シンチ,心臓MRIでは前壁心尖部のviabilityはないものの,前壁基部から中部にかけてはviabilityが存在した.保存的に心不全をコントロールした後,冠動脈バイパス術を施行した.術後の経過は良好で,術後7日目に退院した.術後1カ月時のLVEFは52%に改善していた.左室緻密化障害は進行性に心機能の低下をきたす可能性があり,本症例においても今後は綿密に経過観察していく必要があると考えられた.

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