糖尿病学の進歩プログラム・講演要旨
糖尿病学の進歩プログラム・講演要旨
セッションID: BL-5
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レクチャー:糖尿病の成因と病態の解明に関する研究の進歩(1)
膵β細胞の再生医療
*宮川 潤一郎
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抄録
近年、再生医学により個体の欠失した臓器機能を補充ないし回復させるための様々な研究がなされており、糖尿病の分野においても新たな糖尿病治療法として、膵β細胞再生医療を目指した研究が行われている。研究内容を大別すると、β細胞移植治療やバイオ人工膵臓のためのcell sourceの確保をめざしたインスリン産生細胞の作成および膵臓あるいは他臓器を標的としたin vivoにおける再生誘導・促進療法の開発などであり、主に以下のようなアプローチによる検討がなされている。(1) インスリン産生細胞の作成 (1) ES(胚幹)細胞の利用 (2) 膵臓あるいは他臓器由来の内分泌前駆細胞ないし組織幹細胞の利用(2) in vivo再生誘導・促進療法 (1) β細胞分化・増殖誘導ないし促進療法 (2) 骨髄細胞移植によるβ細胞再生療法の可能性 これらin vitroおよび in vivoにおけるアプローチも、効率的かつ再現性のある増殖・分化誘導法の確立という点など解決すべき問題を抱えており、いずれも臨床応用可能とまでには至っていないのが現状であろう。また、実際には、同時に移植免疫あるいは自己免疫(自己免疫性1型糖尿病の場合)の制御が要求される。再生医療の対象となる糖尿病患者においては、少なくともインスリンによる補充療法が存在するし、膵臓移植や膵島移植も技術的には確立されており、再生医療が存在しなければ患者を救えないという状況にはない。しかし、前者においては頻回の自己注射や血糖測定等によるQOLの著しい低下を余儀なくされており、後者においては技術的には可能であってもドナーからの臓器提供は極めて少なく、医療経済的な問題も含め、その恩恵を享受できる患者は限られている。膵β細胞再生医療はこれらの治療法を補完する意味でも意義があり、その実用化を目指したさらなる進歩が望まれる。
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© 2005 日本糖尿病学会
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