抄録
症例は1歳8カ月,5.7 kgの女児.出生後間もなく先天性二尖弁の大動脈弁狭窄症および前尖逸脱による僧帽弁閉鎖不全症と診断された.生後40日目に大動脈弁バルーン拡張術が行われたが,その後有意な大動脈弁閉鎖不全を生じ,僧帽弁逆流も徐々にIV度へと悪化した.1歳過ぎから体重増加なく,内科的心不全管理の限界に達し手術となった.Glutaraldehydeで前処理した自己心膜によるleaflet extension法により大動脈弁を形成し,僧帽弁は機械弁置換を行った.術後大動脈弁の圧較差40 mmHgを残したが,大動脈弁閉鎖不全は消失した.僧帽弁周囲逆流による溶血と低左心機能による心不全が遷延したものの,やがて改善し術後6カ月目に退院した.狭小弁輪で低左心機能の乳幼児の大動脈弁疾患においては,leaflet extension形成術は選択肢の一つとなり,本術式によって危機回避し得る症例があると考え報告した.