抄録
症例は51歳,男性.近医で心電図異常を指摘され当院に入院した.10歳の時に猩紅熱で入院歴がある.冠動脈CT検査,冠動脈造影検査で,右冠動脈閉塞(RCA),左主幹部(LMT)の冠動脈瘤を含む3枝病変を認め,手術の適応となった.心停止下に動脈グラフトによる冠動脈バイパス術(CABG)および瘤切除を行った.冠動脈造影検査ではグラフトの開存を確認した.病理診断は川崎病による冠動脈瘤であった.川崎病に合併した冠動脈瘤に対する手術はCABGが基本手術であり,瘤切除を行うかどうかについての確立された治療指針はない.われわれは,瘤内血栓形成からLMTが閉塞する可能性や,冠動脈瘤の原因が確定されていないことなどから,CABGと瘤切除を選択した.しかし,今後は経皮的冠動脈形成術(PCI)による追加治療が不可能であるため,グラフト閉塞を予防することが必須であると思われた.